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コンセプチュアルスキルとは?意味や構成要素、高め方をイチから解説 - ツギノジダイ

 経営における問題解決には、コンセプチュアルスキルが役立ちます。人材マネジメントに用いられる「カッツ理論」は、マネジメント層に必要な能力を3つに分けてモデル化したものです。そのうちの1つであるコンセプチュアルスキルを高めることにより、組織全体の効用を最大化できると主張しています。

 コンセプチュアルスキルとは、「起こったことや行ったことの中から意味を見出す力」のことです。日本語では「概念化能力」としばしば訳されます。

 物事の本質を見抜く能力があれば、経営に問題が生じた際に素早く的確に対応できます。日ごろから抽象化と具体化を行き来する思考の習慣があれば、これまでの経験・知識と目の前の事象との間にある共通点を見出すことができるからです。つまり、あらゆる経営判断の成否は、決断や実行を行う者のコンセプチュアルスキルによって決まるということです。

 コンセプチュアルスキルは、1955年に米国ダートマス大学のロバート・L・カッツ助教授(1933-2010)が『スキル・アプローチによる優秀な管理者への道(原題:Skills of an effective administrator)』という論文で提唱しました。

 カッツ氏は、その後ハーバード大学とスタンフォード大学で教鞭をとったため、元ハーバード大学教授として知られています。研究分野は、経営学や社会組織心理学に分類されています。

コンセプチュアルスキルの定義と高め方
コンセプチュアルスキルの定義と高め方(デザイン:吉田咲雪)

 マネジメントの階層ごとに必要なスキルを提示した「カッツ理論」は、現代においても人材マネジメントの有効なモデルとして注目されています。

 カッツ理論では、3つのマネジメント層と3つの能力を提示し、どのマネジメント層でどのスキルが重要視されるかを述べています。

カッツ理論におけるマネジメントスキル
カッツ理論におけるマネジメントスキル

 一番下に位置づけられている監督者層(Lower level)に求められるのがテクニカルスキル(専門能力・業務遂行能力)とヒューマンスキル(対人能力)です。コンプチュアルスキル(概念化能力)はそれほど求められません。

 真ん中に位置づけられている管理者層(Higher level)では、コンセプチュアルスキルの比重が高まり、テクニカルスキルの比重が下がります。

 一番上に位置づけられている経営者層(Top level)では、コンプチュアルスキルの比重がさらに高まり、テクニカルスキルの比重がさらに下がります。

 カッツ氏は、これらの3つの能力を完全に分離することは難しいとしつつも、独立したものとして扱うことを試みたのです。

 現代はカッツ理論の時代と異なり、大量生産時代ではありません。業務が細分化したことで、一番下の監督者層にもコンセプチュアルスキルがより求められるようになったと言えます。

 組織にはよく「気合いで走り続ける」タイプの社員がいます。このようなスタッフ社員は、はじめのうちは大きな戦力となります。しかし、行動した結果から学ばないので、いつまでも効率が上がらず、伸び悩んでしまいます。

 このようなタイプの社員が監督者になると、あまり意味のないことで組織全体の仕事を増やしたり作業レベルを引き上げたりして、部下が困惑するようになります。意思決定も悪手なものになりがちです。この状態を放置すれば、組織全体で不満が高まり、パフォーマンスが低下していきます。

 このようなタイプの社員を、「管理者に向かないのでは?」と決めつけてしまうのではなく、メソッドにしたがって育成することが重要です。カッツ理論で新鮮なのは、優秀な管理者かどうかは、内面的なもの、すなわち人物の特性や性格のようなもので決まるわけではないと主張したことです。あくまでも行動にフォーカスし、 その行動にどのような特徴があるかを明らかにしようとしたのです。この人でなければ優秀な管理者になれないということではなく、能力を身につければなれるということです。

 しかし、カッツ氏は論文の結論として、コンセプチュアルスキルが内面的な能力とみなされるべきかもしれないということを認めています。 この能力を身につけるための方法を提示しつつも、それが実際に効果的かどうかは疑問であるとしています(方法は後述)。

 カッツ理論は時代を経て、さまざまな人材育成のコンサルティング会社やトレーナーによって発展しています。ここではインドの農業技術コンサルティング会社・Krishi Vigyan Kendras(KVK)が、2019年に人材能力開発の研究の中で公表した「コンセプチュアルスキルの優先すべき構成要素」を紹介します。

  1. 規律性(Discipline)
    ルールや秩序を定め、それを守る能力です。
  2. 優先順位の決定(Prioritizing in organization)
    組織の中で優先するべき事は何なのかを考える能力です。
  3. 精神的安定性(Mental stability)
    感情的にならず、冷静さを保つ能力です。
  4. 総合計画性(Comprehensive planning)
    包括的な計画を立てる能力です。全体を俯瞰して何をどの順序で実行するかを考えます。
  5. 時間管理(Time management)
    業務時間の見積もりや 調整を行う能力です。言い換えれば、スケジュール管理のスキルです。
  6. 創造性(Creativity)
    新しい 概念を産み出す能力です。 たとえば未曾有の出来事が起こったとき、過去の方法ではなく、新たな方法で対応するといったことです。仕事の手順を見直して、スマートに遂行できる斬新な方法を思いつくことも含まれます。
  7. 計画の有効性評価(Evaluation of planning effectivenes)
    計画が有効なものであったかどうかを検証する能力です。計画に意味や価値がなければ、計画の立て方を考え直す必要があります。
  8. 権限委譲(Empowerment)
    部下にどこまで権限を委譲するのかを適切に決める能力です。
  9. 決断力(Decision Making)
    適切なタイミングで良い決断をする能力です。決断できないリーダーは、組織に大きなマイナスをもたらします。決められない間に事態がより悪化することは多いものです。間違ってでも早く決断して、その後修正する方が良い場合もあります。ただし、拙速な決断によって失敗することもあるため、決めるタイミングを分析する能力も必要です。決断力はコンセプチュアルスキルの集大成的な能力と言えます。
  10. 仕事量の割り当てとその反応の管理(Managing workload and responses)
    仕事量の割り当てを考え、各メンバーの反応を見て調整していく能力です。仕事量に対してリソースが足りているか、またどのように割り当てれば組織のパフォーマンスが上がるかを考えます。仕事そのもののインとアウトの比率を考えること、すなわちコスト意識も求められます。

 カッツ氏は、コンセプチュアルスキルの考え方を、人生の早い段階で学ぶべきとしています。そうしなければ、経営者層のステータスに達するための大きな進展はないだろうと述べています。コンセプチュアルスキルを早い段階で身につけさせる有効な方法として、以下のものを挙げています。ただし、どれほど効果的かは不明としています。

 一つの組織に固定せず、いろいろな組織で異なる業務を経験させることです。やり方はさまざまですが、最初に目的と期間を定めるケースがよく見られます。ジョブローテーションは多角的な視点が身につく一方で、専門的なスキルが身につきづらい、各組織に負担がかかりやすいといったデメリットもあるため注意が必要です。

 他の組織にまたがるような特殊な業務を割り当てることです。たとえば、普段は営業部門にいる人材に対して、マーケティング部門が担う販促企画に参画させるのも、それにあてはまります。より組織を俯瞰して見ることが求められるため、視野が広がるでしょう。

 さまざまな事例の解決策を考えるトレーニングを積むことで、問題解決能力を高めることができます。ワークショップ型のセミナーを企画すると良いでしょう。実施するときは参加者に趣旨とゴールを説明し、終了後は参加者全員で振り返りを行い、どのような新たな視点や気づきが得られたかを共有します。

 マネジメントスキルという言葉はよく使われますが、抽象度が高く、漠然としたものに思われがちです。現代においても、優秀な管理者になるための重要な要素が、人物の特性や性格であると考えられる傾向があります。

 カッツ理論は、行動を切り口としたアプローチであり、マネジメントスキルを細分化してある程度まで言語化することに成功しました。これは、マネジメントスキルが一部の人間にしか習得できないものではなく、普遍的なものであることを示唆しています。

 早い段階からコンセプチュアルスキルを意識することは、個人にとっても組織にとってもプラスになります。それは、抽象化と具体化の思考トレーニングを積み重ねるということです。コンセプチュアルスキルを社内のあらゆるマネジメント層に浸透させれば、会社として同じ失敗を繰り返すことがなく、経営目標に最短距離でたどりつけるようになるでしょう。

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