『福岡大学学園通信』第72号(令和3年12月発行)では、「学びの証」と題して、さまざまな分野で学ぶ学生たちの卒業論文・修士論文を紹介しました。
その続編として、卒業論文・修士論文から導かれた結論や成果、今後の課題などについて伺いました。ぜひご覧ください。
今回は、医学研究科修士課程の松尾 智江さんの修士論文「在宅高次脳機能障害者の家族における困難感とレジリエンス構成要素に関する研究」を紹介します。
◎修士論文のテーマ
在宅高次脳機能障害者の家族における困難感とレジリエンス構成要素に関する研究
◎論文の概要
事故や脳血管疾患によって「高次脳機能障害」という障害を持った人を介護する家族の困難感と、回復過程におけるレジリエンスの構成要素について論考しました。
2020年7月~2021年8月の期間に6人の患者さんのご家族にインタビューを行い、聞き取った内容について、Grotberg(レジリエンス研究者)の提唱するレジリエンスの枠組みを用いて分析していきました。最初に質的内容分析を行い検討した後、複線径路・等至性モデル(TEM)を用いて、経時的に困難感とレジリエンスの構成要素の関連性を可視化しました。
◎このテーマに決めたきっかけは?
脳血管疾患発症後に高次脳機能障害の症状がある方や患者家族を在宅で支援した経験から、病院や在宅生活の中でどのような家族看護が必要なのか考え、今回のテーマを選択しました。
◎論文を通して得られたことや今後の課題について
高次脳機能障害者の家族が、事故や発症という「脅威」から、回復するためにレジリエンスを習得して発達させるためには、さまざまな困難に直面する急性期病院での急性期看護、回復期病院での慢性期看護、そして在宅看護の領域から看護の支援を検討することが重要であると学びました。
一つのテーマについて、毎日深く考え続けることは初めての経験でした。考察を論文化することが難しかったですが、先生や家族の応援もあり、執筆でき感謝しています。
◎今後に生かしたいこと
今回の対象は高次脳機能障害者の家族でしたが、障害を持つ家族に限らず、疾病を持ちながら在宅で生活している方々の看護や支援にも生かしていきたいです。
◎大学院での3年間を振り返って
様々な職場で働く医療職の方々と共に学ぶことができた3年間はとても刺激的でした。バックグラウンドの異なる学友の意見や考え方を、今後の私自身の看護や支援に生かしていきたいと思います。
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