各界で活躍する方々が、自身にとって忘れられないクラシック音楽の一曲と共に人生を語ります。今回登場するのは、横浜みなとみらいホール館長の新井鷗子(おーこ)さん。クラシック音楽専門の構成作家として多くのテレビ番組やコンサートを手掛けてきた新井さんは近年、インクルーシブアーツの研究者として精力的に活動しています。研究活動の転機となった出来事、そして、挫折続きだったキャリアのはじまりの日々を振り返ってもらいました。
(上)音楽家を諦め「題名のない音楽会」構成作家に 何度も心折れた日々 ←今回はココ
(下)自動で伴奏するピアノ「1人の夢をかなえるとみんなのためになる」
1本指でも「プロと同じ楽器で弾きたい」 意志の強さに感激
それは、2015年の夏に筑波大学付属桐が丘特別支援学校を訪れたときのこと。右手の人さし指だけを使ってピアノを弾く、脳性まひの高校2年生の女の子に出会いました。彼女が練習していたのは、ショパンのノクターン第2番でした。
私は母校の東京芸術大学で同年から始まった産学連携のプロジェクト「東京芸術大学COI拠点(Center of Innovation/以下、芸大COI)」のメンバーとして、「インクルーシブアーツ研究」に携わってきました。インクルーシブアーツ(社会包摂的な芸術)とは、障害の有無にかかわらず、あらゆる人が音楽の楽しさと感動を共有できる社会を目指すもの。研究活動の一環として、肢体不自由の児童や生徒が通う桐が丘特別支援学校を見学させてもらっていました。
私が出会った女の子は、フィギュアスケートの浅田真央選手がショートプログラムでノクターン第2番を使って演技をするのを見て、「この曲を弾きたい」と思ったそうです。それも、指の力が弱くても比較的弾きやすいキーボードなどでなく、どうしてもプロと同じグランドピアノがいいと、1年生のときから1年以上、練習し続けているということでした。
車椅子に乗り、グランドピアノの鍵盤すれすれに顔を近づけて、唯一動かせる指1本に全身全霊を込めてノクターンのメロディーを弾く女の子。その傍らでは音楽の先生が二人羽織のような格好で、彼女が弾けない伴奏の部分やペダルの操作を補っていました。
その光景を見た私は、1本の指だけで何としてもこの曲を弾こうという意志の強さと、彼女をそうした行動に向かわせ、弾きたいという思いをつなぎ留める音楽の力の両方に感激しました。自分が今行っているインクルーシブアーツ研究の中で、何かしらのテクノロジーの力を使って演奏を彼女一人で完成する形にできないか。翌日にはピアノの自動演奏技術を持っているヤマハに相談を持ちかけ、共同研究が始まりました。
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