そよがすがりつくシーンは打ち合わせで自ら実演した
――『It’s MyGO!!!!!』の映像演出については、柿本(広大)監督とも話し合いを重ねたのでしょうか?
綾奈 演出プランに合わせて脚本を書いた回もありました。とくに第3話は「一人称視点でやりたい」と希望があったので、参考として(主人公の主観で物語が進む)『マルコヴィッチの穴』を見ました。ここまで映像のイメージがある状態で脚本を書くのは初めてだったので、面白かったです。
――全編が燈(ともり)の視点から描かれた第3話は話題になりました。
綾奈 脚本のセリフの部分にほぼ「OFF」って書いてありますからね(※キャラクターの口が見えない状態でセリフを話すこと)。まったく映っていないのもどうかと思ったので、ときどき鏡に顔を映したり。燈は基本、下を向いていて、自分の顔を見る機会があまりなくて。初ライブのあと、祥子(さきこ)に「いい顔してますわ」と言われて鏡を見て、そんな自分の顔にちょっと驚いたと思うんです。さりげなくやっていますが、あのくだりは気に入っています。
――他にも演出プランに合わせたシーンはありましたか?
綾奈 第7話のライブ回で、楽屋をずっと映しているシーンですね。あそこは楽屋の中に何箇所か定点カメラが置いてある想定で、これは参考として『モニタリング』を見ました(笑)。
――(笑)。そういった演出プランに合わせて、脚本の構成を変えたところはありましたか?
綾奈 構成までは変わらなかったですが、より映像に踏み込んだ脚本にすることは意識しました。たとえば、第4話でそよが祥子に会いに行ったものの、袖にされるシーンがありますよね。校門で待っていたそよが「……久しぶり」と微笑んだ直後に「待って!」と言いながら、もう(祥子を)追いかけている。キレのある場面転換で、話も早くていいなと。
――シチュエーションが思い浮かぶと、細かなセリフまわしも変わりそうですね。
綾奈 変わりますね。第8話でも、祥子にそよがすがりつくところがありますよね。あそこはすごく「みっともなく」しようと、すがりついたまま地面に膝をついてほしくて。それがいいんだとなかなか言葉で説明するのが難しかったので、打ち合わせの場で自ら実演しました。他の脚本家の方に祥子役をやっていただいて(笑)。第10話の燈と初華(ういか)の出会いのシーンも、脚本家さんたちに実際にやっていただきました。プラネタリウムのシートを倒したら目と目が合って……という。見ている私が楽しかったです(笑)。
「一生」という言葉でキャラクターを縛りたかった
――セリフの中で印象的だったのは「一生」という言葉です。「MyGO!!!!!」というバンド名と対になっていると思うのですが、中高生にこの言葉を背負わせるのが作品の特徴にもなっていますね。
綾奈 そうですね。「一生、バンドしてくれる?」というセリフがこの作品にとりかかって最初に浮かんだセリフなのですが、それは前回も話した「バンドを続けるのって難しいよね」という想いを言葉にしたものです。あとは私のエゴですけど、「一生」という言葉で縛りたかった。『バンドリ!』シリーズは長く続いていますが、それだけにずっと同じチームで続けていくのは難しい。だけど、気持ち的には一生、続けていこうね、という切なる願いが入り込んでいますね。
――そういうお話を聞くと、睦(むつみ)に「私は……バンド、楽しいって思ったこと一度もない」というセリフを言わせているのにも大きな意味を感じます。
綾奈 『バンドリ!』シリーズにバンドが楽しくない子がいるんだ!?と驚かれたと思います(笑)。睦自身がそう思った理由はまだ伏せていますが、これも「バンド内で全員が同じ気持ちでいるのは難しい」ことを示したものですね。ちなみにあの睦のセリフでCRYCHIC(クライシック)の解散が決定的になりますが、それは祥子だけに解散の責任を背負わせたくなかったからです。きっかけが祥子であるのは事実ですが、睦が崩壊の決定打を打つ。睦も、これからずっと罪を背負うことになります。
第9話のあとは自身でも「バンドをやれるんだろうか」と思った
――もともとCRYCHICの曲だった「春日影」をMyGO!!!!!が演奏したことが新たな波乱を巻き起こしたように、楽曲も物語を動かす大きな鍵となっていますね。
綾奈 あそこで祥子が泣いてしまうことで、CRYCHICをどれだけ大事に思っていたかがわかりますよね。本当は辞めたくなかったのかな……とか。Ave Mujica(アヴェムジカ)結成のきっかけにもなっています。もともと「春日影」は本作の最初期にできた一曲で、脚本を書きながらずっと聞いていました。歌詞が本当に素敵なんです。
――楽曲の発注にはどのようなかたちで関わったのでしょうか?
綾奈 「春日影」と「栞」は、タイトルの案出しに参加しました。前者は、ブシロードミュージックの中村多絵さんの案です。日影とついているのに春の日の光という意味で、すごく素敵だなと。後者は「ちょっとひとやすみしよう」という楽曲の内容は決まっていたので、じゃあ本の間に挟む栞はどうかな、と思って提案しました。
――燈(ともり)がソロ活動を思い立つ第10話では、ポエトリーリーディングからパフォーマンスが始まりますが、このアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
綾奈 脚本の打ち合わせでアイデアが出ました。もともと第10話は燈が頑張る構成になっていたのですが、第9話まで進んだ段階で「この子たちはまだバンドをやれるんだろうか?」と私自身も心配になりました。そのときに、彼女がひとりでステージに立つという案が出て、すごくいいなと。燈は楽器をやっていないですし、ステージに立つなら朗読、ポエトリーリーディングしかないでしょうと。そこで彼女の想いが伝えられたのはよかったです。
――ソロ活動を経て演奏された「詩超絆(うたことば)」は、バンドメンバーが次々と演奏に参加していく演出も印象的でした。
綾奈 まっさきに楽奈が加わるのがいいんですよね。「詩超絆」はメンバーたちが戻ってくる順番に合わせて、楽器の音が追加されるように作っていただきました。
- 綾奈ゆにこ
- あやなゆにこ 脚本家、マンガ原作者。2008年に脚本家としてデビュー。『BanG Dream!』シリーズには第1期から参加している他、『きんいろモザイク』シリーズ(シリーズ構成)や、『ギヴン』(シリーズ構成)なども手がける。近年の参加作には『ビックリメン』(シリーズ構成)がある。
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