『MyGO!!!!!』のストーリーに「自分の人生を差し出そう」
――『It’s MyGO!!!!!』は、視聴者も想定外のシリアスなドラマになりました。
綾奈 最初にプロデューサーから「がっつりシリアスなドラマが見たい」という依頼がありました。それを聞いて「自分の人生を差し出そう」と思ったんです。それが「一生、バンドしてくれる?」というセリフにもつながっていくのですが。
――つまり、実体験が反映されているわけですね。
綾奈 はい。お話をいただいた当時、燈(ともり)みたいに人間関係で裏切られ、人間不信に陥っていました。その気持ちを、燈に背負ってもらった感覚はあります。
――キャラクターに託すことにしたと。
綾奈 虚実の実のあるドラマが描けるのではないかと期待して。世間に自分の状況を説明したいということではなく、こういう経験って誰にでも起きると思うし、私自身も悩んでいる真っ最中だから、どこへ向かうかまったくわからない。そういうものと向き合いながら物語を作っていくのは面白いだろうなと思いました。なので、スタート地点では、燈の心境がどこに行くのかわからなかったのですが、終盤で「あ、ここまでたどり着いた」と気持ちが整理できたんです。第11話で愛音(あのん)の家で衣装を作るとき、燈が「一生の話」をするじゃないですか。あの結論は、自分が悩んでいる時期には見つけられなかったものだったんです。
――結果的に自分自身をカウンセリングしているような感じになったわけですね。
綾奈 ああ、そうかもしれません。『It’s MyGO!!!!!』の現場は、たしかにカウンセリング感がありました。それぞれが経験した実例を出しながら、キャラクターの心境を組み立てていくような。それがリアリティにつながったところはあると思います。
キャラクターの関係性と感情から物語を作っていった
――全体の構成としては、CRYCHIC(クライシック)というバンドが解散したあとの成り行きと、MyGO!!!!!が結成に至る流れがクロスしていきます。
綾奈 CRYCHIC解散を起点に2バンドに分かれていく、そのMyGO!!!!!サイドのお話ですね。MyGO!!!!!とAve Mujica(アヴェムジカ)をつなぐ存在としてCRYCHICが必要でした。
――なるほど。
綾奈 今回、キャラクターの関係性と感情から物語を作っていったんです。こだわらなきゃいけないのはそこだなと。相関図を作って、元CRYCHICメンバーがお互いをどう思っているか、他の子たちはどう絡んでくるのかを考えました。立希(たき)が生まれたのも、作詞の天才である燈のことを「すごい」と思ってくれる人がいてほしいからでした。
――物語は燈ではなく、愛音の視点から始まりますが、それも人物の配置と関係性の結果ですか?
綾奈 そうですね。CRYCHICの解散が大きな鍵になっていますが、そこから話がスタートすると、いきなりヘビーな展開で説明することも多く、見る方のハードルが高くなってしまうと思ったんです。なので、まっさらな状態から燈たちに出会う人が必要で、愛音を語り部にしました。また、燈の視点だと、彼女自身の人となりが第三者に伝わりにくいなとも思ったんです。
――たしかに、燈の不思議さは第三者の視点があってこそですね。
綾奈 あとは、CRYCHICにこだわっている子がほしかった。燈は過去から目を逸らしたい気持ちがあって、立希は燈がいればいいと思っている子ですから(笑)。その役目を担うために生まれたのがそよです。彼女が暗躍するおかげで、まだこの問題はくすぶっているのだとわかる。
――そこでいくと、物語の配置的にも楽奈(らーな)はトリッキーな存在ですね。
綾奈 彼女はちょっと特殊で、じつは企画当初、『It’s MyGO!!!!!』とは別のプランがあって――それはTVアニメの1期と2期の間の物語で、1期でライブハウス「SPACE」という、みんなにとっての「聖地」がなくなったあと、2期で「大ガールズバンド時代」が始まるのですが、その間に何があったのかを描くというプランがあったんです。そのとき、「SPACE」のオーナーの関係者として生まれたのが楽奈でした。
――楽奈と「SPACE」のかかわりは、後半で明かされますね。
綾奈 ふらっと現れて、なんとなく居ついたように見えた楽奈もまた「迷子」でした。第12話で、オーナーも出せたのはうれしかったです。
バンドはそもそも「始めるまで」が難しい
――シリアスな物語として見せるために、気をつけたところはありますか?
綾奈 主に2点あります。ひとつは、これまでのシリーズは「バンドをやるぞ!」という気持ちで初めからメンバーがまとまっていますが、そもそもそこにたどり着くのが難しいよね、というところです。「バンドをやるのって大変だよ」と。
――同じ理想を掲げて息を合わせるだけでも実際は大変ですからね。
綾奈 モチベーションも最初はバラバラでしょうし、スケジュールを合わせたり、それぞれが努力しないと続かないじゃないですか。もうひとつは、なかなか仲よくならない子たちを描きたいと思ったんです。「キラキラドキドキ」になじめない子たち――極端な言い方をすれば、キャラクター自身にパワー(推進力)があまりないというか。
――そこは派手なキャラクターよりも、リアリティを優先したわけですね。そういった物語を描くにあたって、バンドのあり方や成り立ちについて調べることはあったのでしょうか?
綾奈 実際にバンドをやっている高校生たちの様子を、けっこう調べましたね。小さなライブハウスを見に行ったり。海鈴(うみり)に反映したのですが、SNSで見ていたベースの子が、ある時期10個くらいバンドをかけ持ちしていて。
――まるでセッションプレイヤーのように。
綾奈 スーパーベーシストみたいな子って、本当にいるんだな~と。海鈴が「(バンドを)30個やってる」と言うのは、その子の話をもとにしています。10個からかなり盛りましたけど(笑)。
- 綾奈ゆにこ
- あやなゆにこ 脚本家、マンガ原作者。2008年に脚本家としてデビュー。『BanG Dream!』シリーズには第1期から参加している他、『きんいろモザイク』シリーズ(シリーズ構成)や、『ギヴン』(シリーズ構成)なども手がける。近年の参加作には『ビックリメン』(シリーズ構成)がある。
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