Search

東証で企業選別の第2幕 - 日経BP

杉山 俊幸/日経BP 総合研究所 主席研究員

2022年10月31日、東証株価指数(TOPIX)を構成する銘柄のウエート低減が始まった。対象企業にとってプライム基準はより遠のく。一方、好機と捉える会社も出てきた。

 東証再編後に暫定的にプライム市場入りを許された経過措置の企業に試練がやってくる。東証株価指数(TOPIX)改革の一環で、流通株式時価総額が100億円に届かない企業は2022年10月31日から構成銘柄のウエート低減の対象となる。ウエートは四半期ごとに10分の1ずつ減り、10回目の四半期、つまり25年1月末にTOPIX構成銘柄から完全に外される。

 そもそも22年4月の市場再編で、経過措置としてようやくプライム残留がかなった企業群だ。TOPIX構成銘柄から除外されれば日々の売買にも影響が出る。JPX総研の資料によればETF(上場投資信託)や投資信託、年金運用などTOPIXに連動した資産は22年3月末に約80兆円という。時価総額が約100億円のある企業で試算するとTOPIX連動ETFなどが保有する同社株は約10億円。これが順次減っていく悪循環が始まる。

 段階的ウエート低減の呪縛から逃れる最後のチャンスが23年初めにやってくる。例えば3月決算企業なら3月末の流通株式数に1~3月の平均株価を乗じ、それが100億円超となればいい。加えて、年間売買代金回転率が0.2以上という条件をクリアすれば、23年10月から今度は四半期ごとにウエートが10分の1ずつ回復し、24年7月に元に戻る。

「TOPIX外れたら社内も暗く」

 市場ごとの特徴を鮮明にし、グローバルな競争力を持つための東証再編だったが、期限が明確でない経過措置とのあいまいさに懐疑的な見方も強い。ただ、無意味と言い切るのは早計だろう。「資本効率の具体的な改善に取り組んだり、業績向上への策をめぐらせたりして、改革を進める企業は少なくない」(大和総研の神尾篤史主任研究員)との声もある。

 例えば舗装用ローラーの酒井重工業、同社の酒井一郎社長は言う。「仮にTOPIXから完全に外れ、さらにプライム上場でなくなったら、社員も社内も、そりゃ元気もなくなりますよね。だから意識を180度変えたんです」。舗装用ローラー業界で世界初となる緊急ブレーキの搭載や、電気自動車(EV)対応のデモ機の完成など、やるべきことはやってきた。

開発を進めるEV対応の舗装ローラー<br><span class="fontSizeS">(写真:酒井重工業)</span>

開発を進めるEV対応の舗装ローラー
(写真:酒井重工業)

 従来路線を変えて、例えば22年1月、初めてのESG説明会を動画付きで実施する中でこれらを披露した。自己資本利益率(ROE)3%以下なら配当性向100%、ROEが6%を超えても同50%とする株主還元を打ち出している。経過措置入りの基準となった21年6月末の流通株式時価総額は63億円だったが、22年3月末には85億円まで高めている。

 建材商社の高島は、配当に自社株買いを加えた総還元性向でこれまでの3割弱から5割まで引き上げる。堅実経営から戦略的投資をする体制に切り替え、70億円を念頭に置く。同期間に流通株式時価総額を48億円から63億円に上昇させた。TOPIX改革という逆風を好機に生かす。そうした試行錯誤が企業を強くし、ひいては株式市場を活性化する。

杉山 俊幸(すぎやま・としゆき)
日経ビジネス編集委員、副編集長を経て日経デジタルマーケティング編集長、日経ビッグデータラボ所長、日経クロストレンド発行人などを経て現職。菅義偉氏、安倍晋三氏などの取材を通じ社会課題への政策対応を執筆、2007年には水俣特集で循環型社会を紹介し現在も関連テーマを追う

Adblock test (Why?)



from "構成" - Google ニュース https://ift.tt/LlZq3UD
via IFTTT

Bagikan Berita Ini

0 Response to "東証で企業選別の第2幕 - 日経BP"

Post a Comment

Powered by Blogger.