東京工業大学は2022年10月5日、同大学科学技術創成研究院と共同研究企業による研究チームが、「Pillar-Suspended Bridge(PSB)」と呼ぶ技術を用いたチップレット集積技術を開発したと発表した。最小限の構成と製造プロセスで、広帯域のチップ間接続性能とチップレット集積規模の拡大といった要求に対応するチップレット集積技術となる。
チップレット集積技術は、ムーアの法則による半導体集積回路微細化に変わる集積規模拡大、性能向上/消費電力低減の新しい進化軸として注目を集めており、これまでの半導体集積回路技術では実現できなかった、異種構造集積による性能向上や、集積規模のスケーラビリティを提供できるという。
これまでにチップレット集積のためのプラットフォーム技術として、シリコン・インターポーザや、ポリマーベースのRDL(Redistribution Layer)インターポーザを用いた集積技術が開発/実用化されているが、大規模な集積にはウェハサイズや製造技術による制限が指摘されている。
大規模な集積に向け、シリコン・ブリッジとよばれる局所的に配置された高密度配線チップを用いる技術が開発されているものの、構造や製造プロセスの複雑性や高集積化のための製造精度の高さが課題となっている。
共同研究では、最小要素のチップレット集積構造/プロセスとして、Pillar-Suspended Bridge(PSB)技術を考案。コンセプト実証試作を実施し、実現性を立証した。チップレットとシリコン・ブリッジの接続部には、「MicroPillar」と呼ぶ柱状金属のみが介在している。チップレット集積体は、ブリッジと共にモールド樹脂封止し、外部電極にはシリコン・ブリッジ側のモールドを貫通する「Tall Pillar」で接続する。
製造工程におけるAll Chip-lastプロセスによる高い接合精度と製造工程中のダイ・シフト(モールド封止の際チップが動いてしまう現象)の抑制、線膨張(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)の整合した接合プロセスでこの構造を製作している。
この構造により、チップレット/ブリッジの最小限の接続構造によるチップ間接続密度や電気特性の向上、外部接続配線の高周波特性や放熱性能の改善に対応する。また、ブリッジの配線の種類が選択できることや、集積規模拡大時の歩留りの問題がなく(Known Good Bridge)、集積モジュールのサイズや製造単位を大型パネルなどへ拡大できるというメリットがある。
PSB構造は、ブリッジ接続によるチップレット集積に関してシンプルで合理的な構造を有する。Fan-Out機能を有する配線層(例えばRDL Interposer)をこれに接続することで、理想的なチップレット集積パッケージや、大規模なチップレット集積システムを構成できる。
特長は、チップ間の広帯域接続のMicroPillarを経由したシリコン・ブリッジ接続構造と、All Chip-lastと呼ぶ製造プロセスで、この構造とプロセスは、チップレット集積に求められる要求を最もシンプルな形で提供するものといえる。この技術は、今後、鈍化が見込まれる微細化に代わり、半導体集積回路システム技術の進化を加速していくことが期待される。
今後、これらの接続密度向上/集積規模拡大、高性能ブリッジ配線技術、グローバル配線集積技術の開発、信頼性確認、システム適用検証などを行う予定。また、今回の研究を含むチップレット集積プラットフォーム技術全般を対象に、製造技術/要素技術からアプリケーションに至るバリューチェーンでの研究開発と、その産業化を目的としたチップレット集積プラットフォーム・コンソーシアムを設立した。
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