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ラックスマン「D-07X」のハーモニーの美しさは必聴。回路構成のブラッシュアップで上位機に迫る表現力を獲得 - PHILE WEB - PHILE WEB

上位機の技術とサウンドを受け継ぎながら、最新性能を獲得した「D-07X」

ラックスマンのディスクプレーヤーはフラグシップ「D-10X」(SACD/CDプレーヤー)の次が「D-03X」(CD専用プレーヤー)で、両者には約100万円の価格差があり、間を埋める製品を待つ声が高まっていた。その期待に応えたのが今夏発売されたCD/SACDプレーヤーの「D-07X」である。


ラックスマン SACD/CDプレーヤー「D-07X」(定価:825,000円/税込)

価格はD-10XとD-03Xのほぼ中間だが、内容はD-10Xに近い。というよりD-10Xとの違いはアナログオーディオ回路、メカニズムまわりの素材や筐体構造などに限られ、メカニズム本体やDACはD-10Xと共通する。D-10Xに興味があるが価格がネックという人は本機の中身が気になるはずだ。

左側にメカを配置することにはラックスマンならではのこだわりがある。こだわりの例をひとつ挙げると、センターメカだとシャーシが左右に分断されて両側のスペースが狭くなるが、片側に寄せればアナログ回路に十分な容積を配分でき、設計の自由度が上がるのだ。実際に、上下2段構成のメイン基板は部品の配置にゆとりがあり、デジタルとアナログの干渉を抑える効果も期待できる。


D-07Xの内部構造。左側にディスクトレイを設置するのは「D-10X」「D-03X」とも共通する特徴

D-10Xと異なりトレイ手前にシャッター機構はないが、その分だけトレイの可動範囲に余裕が生まれ、ディスクを載せやすくなったのは歓迎すべき点だ。もちろんシャッターを省いてもディスク回転に伴う風切り音などが漏れることはなく、シャーシ側板に直付したオリジナルメカ「LxDTM-i」の剛性の高さとあいまって、動作音や振動はまったく気にならない。ハイエンドのディスクプレーヤーが満たすべき条件を確実に押さえている。

D-10XとD-07Xのフロントパネルの厚みの違い。D-10Xの方が分厚く、トレイにシャッター機構が付属するなどの違いがある

ローム製ハイエンドDAC「BD34301EKV」をモノラルモードで動作させる構成や、超低位相雑音型のクロックモジュールの採用はD-10Xをそのまま継承し、最大768kHz/32bitのPCMとDSD 22.4MHz、さらにMQAのフルデコードにまで対応する最先端の仕様も上位機種そのままだ。

D-07Xの背面。USB-BやCoaxial、Opticalデジタル入力も搭載しDAコンバーターとしての性能も優秀

DACの電流出力を電圧変換する回路と最終段のバッファ回路をフルバランスかつディスクリートで構成し、低インピーダンス化した信号を出力する点には本機ならではの特徴がある。DAC後段に不可欠なローパスフィルターはこのバッファ回路内で構成。それによって自然で瑞々しい再生音を実現したというのが設計陣の主張だ。

D-07Xに搭載されるフルバランスディスクリートバッファ回路

トランスの容量を「D-06u」比で50%増やした電源回路はラックスマンがハイイナーシャ電源と呼ぶ強力なもので、D-10Xと同様、安定した電源供給をサポートする。電源ケーブルはリファレンスグレードの「JPA-10000i」を同梱。インレットを従来とは上下逆に配置したのは、コネクタを安定して保持する効果があるという。付属ケーブルはしなやかなので問題なさそうだが、重量級の電源ケーブルに交換した場合はプラグとインレットの負荷を抑えられるかもしれない。

電源トランスの容量をD-06uに比べ50%増大させ、さらなるハイパワーを実現

立体的な空間再現力がプレーヤーの性能をはかる重要な指標

アークブラスの演奏で聴いた《クラーケン》は、トランペットやトロンボーンの楽器イメージを立体的に再現し、ステージに半円状に並ぶ金管楽器群の位置関係まで正確に再現した。また、中央の奥まった位置からチューバの低音が広がって他の楽器を柔らかく包み込む空気感も実感できる。ホールトーンも含む空間情報の精度を確保するためにはプレーヤーの性能が大きく物を言う。プレーヤーが出力する信号から微妙な空間情報が抜け落ちてしまったら、最終的にスピーカーから3次元のサウンドステージが展開することはない。その意味で、立体的な空間再現ができるかどうかはプレーヤーの性能を推しはかる重要な指標になるのだ。


ラックスマンの試聴室にてテスト。スピーカーにはフォーカルの「Scala Utopia Evo」を使用

D-07Xの空間再現能力の高さは、ドゥヴィエルが歌うJ.S.バッハの歌曲からも聴き取ることができた。伴奏はリュート一本だけで、いきなり高音から歌い始める難しい曲だが、ドゥヴィエルの安定した歌唱と繊細な表現力は驚くばかり。忠実度の高いシステムで聴くほど、一音一音の強弱と音色の微妙なコントロールや自然なフレージングなど、このソプラノの傑出した歌唱力がダイレクトに伝わってくる。

D-07Xの筐体の剛性や操作感を確認する山之内氏

D-07Xの再生音で一番感心したのは、最弱音領域での消え入るような表現が曖昧にならず、歌に合わせて音量を限界まで抑えたリュートの動きまで鮮明に聴き取ることができたことだ。最後の音が消えたあとに漂う空気の感触まで伝えるプレーヤーはそう多くはない。D-07Xはその希少な例の一つだ。

ツィンマーマンとヘルムヒェンによる「ヴァイオリン・ソナタ全曲録音シリーズ」から《スプリング・ソナタ》(SACD)は、ヴァイオリンのスフォルツァートやアクセントが乱暴にならず、弓の圧力とスピードを最大限まで高めたフレーズでも響きが飽和しない。BISレーベルの室内楽録音は楽器の実在感と演奏空間の響きのバランスが絶妙で、音像はリアルだがダイレクトすぎる音にはならず、それぞれの楽器の特徴も忠実に聴き取ることができる。特に、ヘルムヒェンが弾く平行弦ピアノの澄んだ響きがヴァイオリンの旋律を際立たせる表現には感服させられた。


プリアンプに「C-900u」、パワーアンプに「M-10X」を組み合わせ、D-07XとD-10Xのサウンドクオリティの違いを探った

ソプラノ独唱もそうだが、直接音だけでなく余韻の質感までていねいに描き出すのはD-07Xの大きな美点の一つだと思う。D-10Xで同じ音源を聴くと、さらに一歩踏み込んでディテールを引き出すアグレッシブな一面を実感できるが、D-07Xはそれよりもハーモニーの美しさや音色の柔らかさで聴き手を惹き付ける。価格の違いはさておき、どちらを選ぶべきか、迷うことになりそうだ。

コネクタ部にもこだわり、XLRにはノイトリック社製シールド付き端子を採用

ジョルディ・サヴァールの演奏でヘンデル《水上の音楽》(SACD)を聴くと、長い残響にも関わらず、管楽器群の動きが曖昧にならず、古楽器ならではの発音の良さなど、演奏の特徴が手にとるように分かる。ふわりと広がる余韻はスピーカーの外側まで大きく広がり、最初の和音が鳴った瞬間に部屋の空気が一変する感覚を味わうことができた。空間描写のリアリティにこだわるリスナーは、このサヴァールの録音のようにアコースティックな情報を豊富に含む録音で音を確認することを強くお薦めする。

MQA-CDはリッキー・リー・ジョーンズ《浪漫》から「恋するチャック」を聴いた。本体ディスプレイに表示されるデコードのステータスはブルーで、「スタジオ」相当の音源であることが分かる。ベースとドラムが刻むリズムの切れが鋭く、ギターやホーン楽器群とのコントラストが鮮やかだ。分厚いリズム楽器群にヴォーカルが埋もれず、個性的な高音が力強く前に迫り出してくる雰囲気はLPレコードで聴いたサウンドを連想させ、鮮度の高さでCDとは一線を画していた。


MQA-CDをフルデコードできるのもラックスマン製品の魅力。再生時はMQAのランプが点灯し、青/緑/赤紫の3色でデコードステータスを表示する

今回はディスクメディアに絞ってD-07Xの実力を検証した。D-10Xに肉薄する表現力を実感するとともに、ハーモニーの美しさなど、本機ならではの良さを確認することもできた。準フラグシップという位置付けをあまり意識せず、予備知識を忘れて2台のプレーヤーを聴き比べてみてはいかがだろうか。

(提供:ラックスマン)

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