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全編が見事なまでに“山崎貴の世界”で構成された『ゴーストブック おばけずかん』【映画コラム】 - オーヴォ

『ゴーストブック おばけずかん』(7月22日公開)

(C)2022「GHOSTBOOK おばけずかん」製作委員会

 山崎貴監督が、子どもたちに人気の童話シリーズ『おばけずかん』を実写映画化。

 どうしてもかなえたい願いがある一樹(城桧吏)、太一(柴崎楓雅)、サニー(サニーマックレンドン)は、小さなおばけに導かれ、「おばけずかん」を探すことになる。

 怪しい店主(神木隆之介)がいる迷路のような古本屋で図鑑を手に入れたものの、古本屋から出ると、そこには知らない世界が広がっていた。3人と臨時教員の瑤子先生(新垣結衣)は、異世界で出会った湊(吉村文香)と図鑑の秘密を知る小さなおばけ=図鑑坊の助けを借りながら、おばけたちを相手に命がけの試練に挑む。

 山崎監督のデビュー作『ジュブナイル』(00)は、3人の男の子とマドンナ的な一人の少女のチームと、彼らを助ける一人の大人(香取慎吾)を主人公とし、レトロな街並みを舞台に、VFXを駆使して宇宙人とロボットという”異世界(未知)との遭遇”を描いたものだった。その宇宙人とロボットをおばけに、一人の大人を香取から新垣に代えれば、驚くほどこの映画と似ていることに気付く。

 加えて、『ジュブナイル』に主演した鈴木杏と遠藤雄弥が、この映画では一樹の両親役で登場するのだから、山崎監督が『ジュブナイル』を意識したのは明らかだ。ということは、この映画は『ジュブナイル』とは親子か兄弟のような関係に当たるのだろう。

 だから、当時『ジュブナイル』が意識したであろう、『E.T.』(82)『グーニーズ』(85)『エクスプローラーズ』(85)『スタンド・バイ・ミー』(86)といった、少年たちの冒険と友情を描いた一連の映画の懐かしいイメージが、この映画からも浮かんでくるところがある。

 また、夫婦の愛情劇と奇想天外な冒険ファンタジーを組み合わせ、現実と非現実のはざまを特撮を駆使して描いた『DESTINY 鎌倉ものがたり』(17)の舞台となった鎌倉を伊豆の松崎や河津に、主人公の作家夫婦の時を超えた愛を子どもたちの友情に、魔物や黄泉の国も現れる摩訶不思議な世界をおばけの世界に置き換えると、この映画に通じる。

 つまり、この映画は、全編が見事なまでに“山崎貴の世界”で構成されているのだ。だから、いつも通り、山崎映画独特の世界に心底浸れるか否かで、好き嫌いが大きく分かれるところがあるだろう。自分は、多少の気恥ずかしさを感じながらも、子どもの頃を思い出しながら楽しく見た。

(田中雄二)


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