マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、ブロック玩具のように、必要に応じて自由に組み合わせを変えられるAIチップを開発した。センサーやプロセッサがブロックのように積み重なった層構造で、各層を物理的な配線ではなく光で接続する。プロセッサのアップグレードやセンサーの追加が容易なため、スマートフォンやウェアラブルデバイス、今後ますます需要が拡大するエッジデバイスへの利用が見込まれる。研究結果は、2022年6月13日付けの『Nature Electronics』に掲載されている。
一般的に電子回路を積層するパッケージングでは、層間の接続に金属ワイヤを利用する。接続は複雑で、分離や再配線は不可能とはいかないまでも難しい。また、新機能を追加したい場合は新規に設計する必要があり、再構成可能とは言い難い。
MITの研究チームは、画像センサーとプロセッサを交互に重ね、金属配線の代わりにLEDとPDによる光通信システムを利用することで、再構成可能で各層の集積や置換が容易なAIチップを作製した。AIチップは画像認識が可能で、プロセッサには、研究チームが2020年に開発したメモリスタ(メモリ付き抵抗器)ベースの人工シナプスアレイを採用している。
実験では人工シナプスアレイを訓練し、ランダムな入力画像の中から「M」「I」「T」を識別できるか確認した。AIチップは、文字が鮮明なときは正しく識別できるが、不鮮明な時は「I」と「T」を識別できなかった。しかし、層の置き換えが簡単という利点を生かして、雑音除去機能のあるプロセッサと直ちに交換し、精度を向上させることにも成功した。「積み重ね、置き換え、新しい機能の追加ができることを示した」と研究チームは成果を強調している。
圧力検知や匂いセンサー、画像認識や音声認識など、層の組み合わせ次第で機能や用途はいくらでも拡大できる。チッププラットフォームを作製し、各層をテレビゲームのように分けて販売することも可能だという。「消費者は好きなものを選んで、ブロック玩具のように既存のチップに追加できる」と、研究チームを率いるJeehwan Kim准教授は語る。
携帯電話やスマートウォッチの機能が古くなっても、本体を廃棄することなく、センサーやプロセッサを気軽にアップグレードして常にデバイスを最新に保てる、サスティナブルな未来が実現するかもしれない。
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